縄酔いの宴

緊縛の危険性②

緊縛をはじめ、SMという行為には、多種多様の楽しみ方があります。

性癖は千差万別。

他人にこうあるべし、と押し付けるものでもありません。

SM業界には他人のそれについて、非難をしないという暗黙の了解があるように思います。一般社会から排除されがちなマイノリティである分、他人には寛容なところがあるのが、業界の特徴です。

マナーを守って、相手の体やメンタルを気遣って、良識あるプレイをしましょう。

相手の嫌がることはやめましょう。

そんな良心はきちんと機能しているようです。

特に緊縛は、芸術だと捉えられることもあります。

私も緊縛は、ただのセックスの延長上にあるものというより、一種の表現行為であると思ってます。

縛り手はもちろん、縄を受ける側にとっても同じこと。

そんな緊縛の危険性に、

依存性がある、というものがあります。

これは個人差があるのですが、受け手(縄を受ける人)の中には、縄に対する感受性が高く、縄に「入る」人がいます。

入る、という言い方をしましたが、その入り方も個人によって違うようです。

私も入ります。入るということの捉え方は人によって違うようですが、

私は縛りの空気に入る、という考え方をしています。

まず、縛りを受ける前に精神統一をします。そうすると、すっと、集中する。周りが気にならなくなります。

普段お店や縄サロンなどで縄をすることがほとんどなので、まず人目を忘れることからはじめなくてはなりません。

縄に集中すると、一縄一縄かけられるごとに、意識のレベルが低下します。

だんだんと無意識の領域に近づいていく。

自分の奥底へ潜り込んでいく。

縛り手も引きずられ、双方の意識がだんだんと無に近くなる。相性がよいもの同士は、精神が同調することがあります。1つの脳で動いているような、まるでシンクロしているような、不思議な感じになります。心の奥底に隠し持っていたものが、共鳴するのでしょうか。

普段、自分を守るために張り巡らせている覆いを、縄が一枚一枚剥いでいきます。縄をかけられ拘束をされ、体が不自由になるのに、受け手は精神を解放させ、自由になるようです。

縛り手は、受け手を自分の力で癒した、快楽を与えた、という充足感があります。いい縛りには、そんな人と人との間にある垣根を取っ払った、一体感があります。

それだけ縛りとは、精神的な要素が強いのです。

私の体感で話をしているので、もちろんそれが一番正しいわけではありません。

ただ、縛りとは、深いレベルでのコミュニケーションなのだということを、知っていただきたいのです。

それだけ、依存性があるということなのです。

そこまで深い結びつきを感じながら、相手とは離れなくてはなりません。

その相手とは、一体どういう関係なのですか?

ふと現実に引き戻されると、途端に虚しくなる。

恋愛感情が絡むと、思いつめてしまうタイプの人は特に、嫉妬から相手を刺したり、自殺をしたりすることもあるようです。

うまくいくと相手のことを何も知らないのに、なぜか気心が知れた間柄のように感じる。絆のようなものが生まれます。

そういう良い関係性を育むには、相当の精神力と人間関係構築力が必要になると思いますが。

多くはパートナーとの濃い密着関係になるので、それぞれのカップルで悩みもあるようです。

 

縄に感じるようになると脳内化学物質が分泌されるようで、麻薬中毒のように縄を欲しがるようになる。

緊縛歴が長くなると、縄を絶ったときの禁断症状も強くなります。縄に感じるということは、特殊な脳内ホルモンが出るようになっている…縄が快楽と結びついてしまったら、

もはや麻薬のようなものになる。

深いところまで行き着くと、そういう状態になります。

わたしも縄に入るようになってしばらくは、がっつり縛りを受けた後は虚脱状態に陥り、心ここに在らずといった危ういメンタルバランスに陥りました。

鬱状態に似ていると思います。

私は最近は慣れがあるのか、頭の切り替えが早くなりましたが、精神的な落ち込みはよくあることです。単純に体力も消耗しているのですが。

きちんと縄に入る受け手というのは、

そんな脆さを抱えています。

縛り手はパートナー関係にある人のことを、体だけでなく心もケアしてあげなくてはなりません。

逆に、深い縛りをしたあとは、縛り手のメンタルも危うくなる場合もあるようです。受け手に依存心が生まれてしまう。

受け手が精神的に闇を抱えている場合、

縛り手がその負のエネルギーをもらってしまう、という話も聞きます。

緊縛に惹かれる人間には、やはり似たような欠落感、虚しさ、孤独感があるように思います。

それを縛りによって癒している…もちろん性的な欲望の解消とも結びついているわけですから、

本来は気軽に人を縛ってはならないのです。

カジュアルな雰囲気で、趣味の延長上として捉えるのならいいのですが、

縛りとは実は恐ろしい行為です。

分かっていながら、縄に魅了されたら、もう戻れない。

何を求めているのか、自分でも理解できないまま、もがくように縛り、縛られる…

そのひたむきであまりにも無垢な交わりが、縛りの醍醐味だと思います。

とても生々しく、人間存在にリアルに迫るものがあります。

虚飾がないのです。

一瞬に弾ける火花を感じるのが楽しい。

 

ほら、危険な香りがしたでしょう?

足を踏み入れたら最後…

社会生活と両立しつつ、溺れないためには、並大抵ならぬ自己コントロール力が不可欠です。

それでもあなたは、縛りたいですか?

縛られたいですか?